えー、どうも皆様こんにちわ。(か、こんばんわか、おはようございますかは読む人の生活習慣によって分かりませんが)お初にお目に掛かりますカシマエスヒロと申します。bossston cruizing maniaというバンドをやっております。「サイトをオープンするからコラムを」という依頼を受けまして、どんなサイトで他にどんな方々が何を書いているのかも全く分からないまま、ある日突然「“サントラの良い映画”について書いて。じゃあ、よろしくねー。」という感じで放り出されたわけですが。まぁ、言われれば書きますけど。あれですよ、僕、映画は割と観ている方だと思いますが、サントラについては特に良し悪しなんか分かりませんからね。なので、あくまで個人的視点で良かったと思う物、もしくは、思い出に浄化されて(作品としてのクオリティーは全く分からないが)「僕の中で良かった事」になっている物について書いてみようと思います。
 
まず、前提として、僕、あんまり映画の良し悪しと音楽の良し悪しがリンクしないんですよ。これ、たぶん、僕等の世代(1970年生まれです。)が最初なんじゃないかと思うんですけど、映画の主題歌が売れるっていう時代が来たんです。例えば、「バック・トゥ・ザ・フューチャー」の「パワー・オブ・ラブ / ヒューイ・ルイス&ザ・ニュース」とか、「ゴースト・バスターズ」の「ゴースト・バスターズ / レイ・パーカーJr」とか、「グーニーズ」の「グーニーズはグッドイナフ / シンディ・ローパー」とかね。で、これのハシリがたぶん「フラッシュダンス」なんですよ。それで「フットルース」があって、映画の主題歌売れるぞってなって、流行りの歌手に主題歌歌わせるって流れになって行ったと思うんですけど。(プラスMTVの普及によってそっち側からの映画の宣伝て事もあるかと思いますが。恐らく年代的にそうです。面倒くさいので詳しくは調べませんが。)で、同じ位の時期に日本ではあれが来るんですよ。角川のメディアミックスの流れで来てたとこへの薬師丸ひろ子のデビュー。で、81年の「セーラー服と機関銃」での主演女優に主題歌歌わせるって流れ。(ただ、これ、今調べたら「セーラー服と機関銃」が81年で「フラッシュダンス」が83年なんで「セーラー服と機関銃」の方が早いんですね。恐ろしいですね角川春樹。)で、なんでおもしろい映画に良い曲がついてるのに映画と音楽の良し悪しがリンクしないのかというと。なんか、全然関係なかったからなんです。あの、基本的に上にあげたこれらの楽曲は挿入歌ではなくて主題歌なんですね。だから、映画のグッと来る場面と曲はリンクしないんですよ。いや、今となっては映画の思い出と曲の思い出がリンクしてるんで、「グッドイナフ」聴いたら「グーニーズ」思い出しますけどね。だけど、ワーグナーが流れるとベトナムのジャングルにナパーム弾が打ち込まれるとこ思い出す(「地獄の黙示録」)とか、「雨に唄えば」聴くと白ツナギにシルクハットの男がじいさん蹴ってるとこ思い出す(「時計仕掛けのオレンジ」)みたいな事はないわけです。

で、こういう主題歌ってのはエンドロールで映画の世界観に浸らせる為に流されるんじゃなくて、どちらかというと「はい、映画終わりましたよ」って役割の方が大きいと思うんです。なので、映画の世界観とか雰囲気とは違っても問題はないんですね。「はい、帰って帰って~」ってする役なんで。で、僕等の世代はこういうのの全盛期の中で映画観てるので、アリになってるっちゃあなってるんです。でも、これが進んでいくと映画の内容と全く合わない曲を、ただ、曲のプロモーションの為だけに使用したりする様になるので、なんていうんですか、僕なんかはもう映画が良かったって事とエンドロールで流れた曲が良かったかどうかって事は別の物として考えているんです。そうすると、映画の良し悪しと音楽の良し悪しはリンクしないって事になるんですね。だから、そういうのを踏まえた上での良いサントラとはって話になるんですが。(やっと本題入ります。)

(という事で、ここからは完全に独断です。)まず、サントラを複数枚持ってる監督というのがふたりいまして、ひとりはスタンリー・キューブリック監督で、「時計仕掛けのオレンジ」、「フルメタル・ジャケット」、「2001年宇宙の旅」、「アイズ・ワイド・シャット」の4枚を持っています。キューブリック監督の場合、既存の曲を使用する場合がほとんどなんですが、その曲の選び方のセンスが抜群なんです。上でも書いてますけど、例えば、「時計仕掛けのオレンジ」で主人公のアレックスが暴力を振るうシーンで必ず「雨に唄えば」を口ずさんでいるんです。こういう既に一定のイメージがついてる曲をあえて違うイメージのシーンに使ったりというのをやるんですけど、それが映画に強烈な印象を残してるんですね。(「2001年宇宙の旅」の「美しき碧きドナウ」なんかもそうですよね。)で、こういうのはDJのMIX CDみたいな今まで知ってた曲に新たな価値観を見出すみたいな楽しさがありまして。特に「時計仕掛けのオレンジ」は、入っているのは基本的にクラシックばかりなんですけど、それのアナログシンセアレンジみたいのもあったりして、ちょっとリミックス的な面白さもあるんですね。なので、個人的に面白いサントラって言われたら、まず、これです。


で、もうひとりは、デヴィッド・リンチ監督です。こちらはキューブリック監督と違って自ら作曲してる場合も多くて、(リンチ監督はミュージシャンとして「クレイジー・クラウン・タイム」と「ザ・ビッグ・ドリーム」の2枚のアルバムを発表しているんですが、両方とも僕結構好きです。)「ブルー・ベルベット」とか「インランド・エンパイア」とか、インダストリアルなノイズと既存のポップスと映画内のサウンドがコラージュされた様な正に映画の世界観そのままって感じの名盤サントラが多いんですが、ここではまず、監督デビュー作の「イレイザーヘッド」のサントラを紹介します。で、これは2014年にリマスターで再発された方がオススメなんですが。「In Heaven」って曲が入っていて、(ピクシーズがカバーしてますね。)オリジナルではトラック2の途中にコラージュ的に入っていたのがリマスター盤では別トラックとして収録し直されていまして。この曲がですね、不穏なのに美しくてかわいくてほんとに最高なんですが、リンチ監督の特徴として、こういう曲をワザと歌のあまり上手くない女の人に歌わせるっていうのがあって。(「ブルー・ベルベット」のクラブ歌手の女の人も絶妙な下手さ加減でしたが。)これも正にそれで、歌がたまらん不安定さでめちゃキュートなんですよね。で、この曲以外はハーシュノイズに映画内でのサウンドやセリフがコラージュされてる曲(というか、音?)が入っているんですが、これがほんとに気持ち良(悪)くて永遠に聴いてられるんです。で、アルバムの最後(正確には最後じゃないんですが)に「In Heaven」が流れ出すと、急に平均感覚を失ったみたいになってマジ昇天しますよ。皆さん是非体感してみて下さい。

https://www.youtube.com/watch?v=owmCUm4lNFU
と、まぁ、映画を観てる時は映画の中に溶け込んでしまってそこまで気づいていなかったけど、いざアルバムとして聴いたら音楽作品としてもヤバイじゃんと思ったふたつを紹介しました。(そうとう偏ったチョイスではありますが。もちろん、ジョン・ウィリアムスやタランティーノのサントラみたいのも好きなんですよ!)あと、主題歌集って事で考えたら「セーラー服と機関銃」、「時をかける少女」から「守ってあげたい」、「スローなブギにしてくれ」、幻魔大戦の「光の天使」まで(つまり、あの頃の角川映画全盛期の曲が全部)入ってる「角川主題歌集」が最高です。(ただ、これもバージョンがいくつかあって入ってない曲があったりもするのでお気をつけ下さい。18曲入りのがおそらく完全版です。)

ちなみに、去年(2016年)に劇場公開された映画からだったら、映画の世界観に浸れるサントラって意味では「この世界の片隅に」。MIX CD的なのだと「エヴリバディ・ウォンツ・サム」この2枚が最高でしたね。長山洋子の「春はSA・RA・SA・RA」と「黒蜥蜴の唄」のフィンランド産カバーが流れるスペイン映画「マジカル・ガール」は欲しくていろいろ探したんですけどサントラ出てないみたいなんですよね。

 

 

ライブハウス秋葉原クラブグッドマンのブッキングマネージャー。
映画好きが講じて始めた映画感想ブログ「とまどいと偏見」も不定期更新中http://esuhiro-kashima.tumblr.com/
更に最近は弾き語りやDJなど頼まれたら割と何でもやるタイプの47歳。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

〔カシマエスヒロ プロフィール〕

オルタナティブバンドbossston cruizing maniaのボーカル。ライブハウス秋葉原クラブグッドマンのブッキングマネージャー。

映画好きが講じて始めた映画感想ブログ「とまどいと偏見」も不定期更新中http://esuhiro-kashima.tumblr.com/

更に最近は弾き語りやDJなど頼まれたら割と何でもやるタイプの47歳。